🐦 フクロウが見守り、トラが励ます。
―― 患者様と医師をつなぐ、二つの贈りもの ――
静かな午後、ひとりの紳士が雪山堂の扉を開けられました。
春日部在宅診療所ウエルネスの院長先生です。
穏やかで落ち着いた声、柔らかなまなざし――
その手には、大切に包まれた二つの作品がありました。
一つはフクロウの絵、もう一つは大きなトラの刺繍。
「どちらも、患者さんからの贈りものなんです」
そう言って、先生は少し照れくさそうに微笑まれました。
■ フクロウ ― “見守る”という優しさ
まず見せてくださったのは、茶褐色の羽をまとったフクロウの絵。
どこか知恵深く、そして優しい目をしています。
このフクロウは、実は春日部在宅診療所ウエルネスの“シンボル”。
それを知ったある患者様が、
「先生のクリニックにぴったりだから」と描いてくださったそうです。
「患者さんが“フクロウを描いたので、ぜひ飾ってください”って。
この子がいると、なんだかみんなが落ち着くんですよ。」
夜を見守る鳥・フクロウは、“不苦労”とも書かれ、
古来より幸福と知恵の象徴とされてきました。
患者様はこのクリニックを、心を休められる“安らぎの森”のように感じていたのかもしれません。
描かれたフクロウの穏やかな表情には、
先生とスタッフの温かさへの感謝がにじんでいました。

額装は、やや赤みを帯びたブロンズのフレームに、黒金泥のマットを合わせて。
夕陽のような深い色合いが、絵の優しさを包み込みます。
表面にはUVカットアクリルを使用し、
光や湿度から守る保存額装として仕上げました。
■ トラ ― “生きる力”を縫い込んで
もう一つの作品は、力強く咆哮するトラの刺繍。
幅80センチを超える迫力ある大作です。
無数の糸が重なり、毛並みの一筋一筋まで緻密に表現されています。
「この刺繍をくださった患者さんは、長い療養生活を送られていました。
針を持つ時間が、リハビリであり、生きる張り合いでもあったそうです。」

ひと針、ひと針に込められた思い。
それはまさに“命の時間”そのもの。
完成の報告とともに、患者様は静かにこう伝えたそうです。
「先生、私の代わりにこのトラを飾ってください。みんなを元気にしてくれますから。」
院長先生はその言葉を、胸の奥で大切に受け止められました。
「このトラは、私たちに“生きる力”を教えてくれる存在です。」
そう語る表情には、患者様への敬意と感謝が溢れていました。
額装は、刺繍の厚みを保ちながら、布地をやさしく巻き込み固定。
マットには金紫色を合わせ、威厳と気品を添えました。
内部には調湿シートや保護シートを組み込み、保存額装仕様で丁寧に仕上げています。
その仕立てはまるで、患者様の想いを未来へと受け継ぐ“心の箱”のようでした。
■ 医療の中にある「心の温度」
在宅診療――
それは病院ではなく、自宅という生活の場で行う医療。
そこには、患者様の日常を支え、寄り添うという深い信頼関係が生まれます。
診療所の白い壁の内側ではなく、
その人の暮らしの中に灯る小さな明かりのような優しさ。
このフクロウとトラには、まさにそんな“心の温度”が宿っていました。
患者様が託したのは、単なる絵や刺繍ではありません。
それは、「ありがとう」と「これからも頑張って」という
ふたつの想いを形にした“心の証”なのです。
■ 額装がつなぐ「想いのかたち」
仕上がった額装を見つめながら、院長先生は静かにおっしゃいました。
「患者さんが見に来られたら、きっと喜んでくださると思います。」
その言葉には、“医療とは人の心を支える仕事”という信念が込められていました。
額装とは、作品を美しく守るだけでなく、
そこに込められた“想い”を未来へと伝える役割を担うもの。
医療と額装――その根底にはどちらも「人を思いやる」という共通の温もりがあります。
私たち雪山堂は、その想いを受け取り、
“かたち”として未来へつなぐお手伝いをできたことを心から嬉しく思います。
🕊 結びに
フクロウが見守る静けさ。
トラが吠える生命力。
この二つの作品は、患者様と医師をつなぐ“心の物語”でした。
それぞれの想いが額の中で寄り添い、
今日も誰かを励まし、癒し、そして希望を灯し続けています。
