江戸の絵師・歌川芳宗の「鍾馗図」
――江戸っ子の遊女と粋な「宴」、そして現代へとつながる“祈り”のバトン
今回ご紹介するのは、MITSUYO様よりご依頼いただいた、特別な掛軸表装の事例です。
郵送されて来たのは、なんとご自身のご祖父様である江戸~明治期の浮世絵師・歌川芳宗(うたがわ よしむね)の作品。
墨の濃淡と筆致が際立つ「鍾馗(しょうき)図」です。
魔を祓う神として知られる鍾馗。その凛々しい表情と迫力に満ちた描写から、まさに“魔除けの力”が立ち上ってくるような一幅でした。
郵送されて来た
作品:シワやシミが多少あります ⇒
軸装を施された作品:存在感や趣がぐっと立派になりました

古き良き筆を、現代の美意識で蘇らせて
経年によりシワやシミが出ていたこの作品を、時代の風合いはそのままに、格調高い裂地と金襴で丁寧に軸装。
選んだ裂地は、深い灰青色。鍾馗の黒衣を一層引き立て、堂々とした佇まいへと導いてくれました。
この色味の選択は、MITSUYO様もご自身の予想を超えたようで、
「もの凄く印象深くなって、とっても良い!」
と笑顔でおっしゃってくださいました。(やった~!)
「うちの祖父、遊女たちと宴でも?」――江戸っ子のユーモア
さらに心に残ったのが、MITSUYO様が語ってくださったご家族のエピソードです。
最近、お墓の改葬を経て、ご先祖のご遺骨を東京都荒川区の浄閑寺(じょうかんじ)へ納められたとのこと。このお寺は、かつて吉原の遊女たちが亡くなった際の「投げ込み寺」として知られています。
そんな話のなか、MITSUYO様はふと笑いながらこう語られました。
「うちの祖父・芳宗は、きっと今ごろ、吉原の遊女たちと宴でも楽しんでるんじゃないかしら(笑)」
粋で、ユーモアのあるひと言に、私たちも思わず頬が緩みました。
ちなみにこの浄閑寺、現在放送中の大河ドラマ『べらぼう』にも登場し、あらためて注目されている場所です。
親子三代が描く“祈り”の物語
そんなMITSUYO様ご自身も、絵画作品を通じて創作活動を続けていらっしゃいます。
今年も、親子三代での作品展を予定されており、
6月15日(日)~22日(日)に与野本町コミュニティセンターで開催される「さいたま市中央区美術家協会展」にて出展されます。
今回のテーマは、とても印象的な流れを感じさせるものでした。
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ご祖父様・歌川芳宗の作品タイトルは《戦(せん)》
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お父様の作品は《果て》
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そして、MITSUYO様の作品は《祈り》
“戦争という荒れた時代の終焉、その果ての荒涼とした風景、
そして、そこに捧げられる平和への祈り”――
そんなストーリーを三世代で紡がれたそうです。
MITSUYO様の作品には、赤と白のコントラストの中に、鶴の姿と平和への願いが込められており、静かで深い感動が宿っています。
想いをつなぐ額装を
一枚の絵に宿る、時代、記憶、そして家族の物語。
がくぶち屋の雪山堂は、そんな「想い」に寄り添いながら、
額装にとどまらない最適な保存と装いをかたちにしていくお手伝いをしています。
そして何より、お客様との会話の中で生まれる笑いや気づき、
そのひとつひとつが、私たちにとっての“宝物”です。
📍さいたま市中央区美術家協会展📍
2025年 6月15日(日)~22日(日)
親子三代の “平和への祈り”
与野本町コミュニティセンターにて
~~ぜひご覧ください~~