血色の良い健康的な笑顔が印象的な穏やかで品のある紳士、S様より、いにしえの書の掛け軸をお預かりいたしました。

1つは河井継之助揮毫の書と言われるもの、もう一点は宮原節庵のものです。

1 before 5河井継之助の書  4 before宮原節庵の書


河井継之助は日本各地で行われた戊辰戦争の中でも、もっとも過酷な戦いの一つであった
「北越戊辰戦争」を軍事総監として長岡藩を率いた人物です。
司馬遼太郎が『峠』で見事にその生きざまを描いており、
また安岡正篤が『陽明学十講』でも触れている人物であります。

軸には、
「一忍を以て百勇を支う可く、一静を以って百動を制す可し」と書かれております。

その継之助の号「蒼龍窟(そうりゅうくつ)」は
~大吾するには多くの辛苦を冒す必要がある~という意味から付けたそうです。
奇しくも、継之助の人生を模しているようです。

S様がお調べになったところ、ご先祖様が新潟で1862年(文久2年)に所有したと、記録にあるそうです。


もう一つの書の揮毫者 宮原節庵は、頼山陽門下で学び、その後江戸の昌平黌で学びを深めた後に、
京都に帰って私塾を開いたそうです。
その際、S家の4代目および5代目が共に京都で師事したそうです。

この書は、S家の五代目が京都で勉学に励んでいた
元治元年(1868年)に『禁門の変』が起こり、
そこから逃れる為の帰郷の際に、節庵先生より頂いたものだそうです。

両書とも、歴史上の事・物が、実際目の前に存在すること自体が恐れ多く凄いことに思えます。


今回、これらの軸の表装修復を依頼されました。
S様は他にも色々歴史的な軸を所有しているそうですが、今回はこの2幅になります。


1 after whole 4 after whole

歴史的重みや、家の安寧・発展を願う心は変わりません。
今回の表装修復により、経年にて浮き出てきた汚れや埃をはらい、新たな裂地をまとった作品は、
これからもS様家の子々孫々をシッカリと見守ってゆくことと思われます。

S様、この度もご用命いただきまして、誠に有難うございます。